本のエントリは久々なんですが、しばらくぶりに変に関心したので、紹介。
村上春樹の『神の子どもたちはみな踊る』です。
短編集なんですが、すべての短編が共通の背景を背負って書かれています。
1995年1月の神戸での大地震を発端に複数の物語が始まります。井坂幸太郎の『週末のフール』の様に物語りの関連性はないのですが、一つの背景に複数の運命があるっていう、現実社会の縮図のような書き方はなかなか面白いです。
どれも春樹らしい作品なのですが、これは春樹しか書けないだろうなってのは『かえるくん、東京を救う』というお話。
出だしがとってもらしいので引用。
片桐がアパートの部屋に戻ると、巨大な蛙が待っていた。日本の後ろ足で立ち上がった背丈は2メートル以上ある。体格もいい。身長1メートル60センチしかないやせっぽちの片桐は、その堂々とした外観に圧倒されてしまった。”かえるくん”が言うところには、近々東京に大地震がおこるそうです。 それも自然の物ではありません。東京地下に眠っていた”みみずくん”がおきだし地震を起こすのだそうです。 ”みみずくん”を倒し、東京を救うために、片桐と”かえるくん”は東京の地下で”みみずくん”と戦う事になるのですが・・・ 話の始まりから、終わりまで春樹節の炸裂した作品でした。 いつもこの手の話を読むと、これは何かのレトリックの様に感じてしまうのですが、こと春樹作品に関しては、それを追求するのは野暮な気がしますね。 『神の子どもたちはみな踊る』 村上 春樹 著 新潮社 ¥ 460 (税込)
「ぼくのことはかえるくんと呼んでください」と蛙はよく通る声で言った。
(中略)
片桐はまだ鞄をじっと脇に握りしめていた。これは何かのいたずらのなだろうか?誰かが着ぐるみの中に入って私をからかっているのだろうか?でも鼻歌を歌いながら急須に湯を注いでいるかえるくんの体つきや動作は、どう見ても本物の蛙 だった。