「ウチの会社はちっとも変わろうとしない」 「あのトップでは、会社を変えるなんて到底無理だ」 なんて感じた事はないでしょうか? あるいは、 「ウチの連中は俺の気持ちが全然わかっていない」 「いくら言っても、下の連中がちっとも動こうとしない」 なんて感じていませんか? そんな人に勧めたい一冊です。
   トップだけでも現場だけでも組織はかわらない。改革の火種を育て、組織全体が大きな炎となった時、組織改革の大きな歯車が回り出す。その方法論が本書のテーマである「組織改革ファシリテーション」である。
  ファシリテーションとはなんでしょうか? 日本語に直すと「共働促進者」とか「供創支援者」と呼ばれています。 つまり、
   集団による問題解決、アイデア創造、合意形成、教育・学習、組織変革、自己表現・成長など、あらゆる知識創造活動を支援し促進していくのである。またその役割を担う人がファシリテーターである。
  筆者はファシリテーターの一例として二人の人物をあげています。 日産を再生させたカルロス・ゴーンと、日本でおそらく初めての民主主義思想者上杉鷹山です。 二人とも大好きな人物です。 組織を動かすには、3つの機能が必要だと言っています。
  • リーダーシップ
    • 組織の方向性を示す
    • 望ましい行動の規範を示す
    • 組織をつくり人を育てる
  • マネジメント
    • 資源の配分を最適化する
    • 進捗を管理して成果を達成する
    • 業務を改善して、質を高める
  • ファシリテーション
    • メンバーの自律性を高める
    • チームの相乗効果を高める
    • 組織学習のスピードを上げる
どれも必要な機能ですが、特にファシリテーションがもたらす「相乗効果」は絶大です。 今私自身は組織改革を狙っていますが、一番重視しているのがこの「ファシリテーション」です。 もちろんリーダーシップ、マネジメントという土壌があって初めて、ファシリテーションが有効なんですが、 閉塞感を打破するのは、「コレしかない」と考えているのです。 また、組織を変える力として3つ改革が必要であると述べています。
  • 戦略の改革
  • 業務の改革
  • 風土の改革
戦略の改革はイメージしやすいのではないでしょうか? 「事業や経営資源の選択と集中」を指します。主に経営陣からのトップダウンで実行され、即効性があり、効果が見えやすい改革です。早ければ数ヶ月で結果が出ます。医療で言うなら、外科手術です。しかしながら、本当の意味での企業の硬直性が治ったわけではなく、いつ再発するとも解りません。 業務の改革は少し時間がかかります。投薬による治療の様なものです。 「顧客志向に基づく業務プロセスの改善」を指します。戦略の改革で示せるのは目標であって、いかに目標まではしるのかを決めるのが、業務改革なのです。一般的に1〜2年の期間を要します。 しかし、トップダウンでは上手く行かず、「やったフリ」などの悪い風土を築く可能性があります。 そこで最後の風土の改革です。 もっとも難しい改革で、従業員一人一人の意識を変えることが目標になります。「自己革新を促す組織風土づくり」といえるでしょう。価値観やメンタルモデルといった文化を変えるため、大きな痛みに耐える必要と、長期間継続してゆく必要が有ります。3〜5年くらいかかって初めて効果が目に見えて来ます。病気の治療と言うより、体質改善に近いものです。 これらの改革を行うための実践的なhow toがかかれているのがこの本です。 また前著として「問題解決ファシリテーター」があり、こちらが入門書になっています。 一応この本だけで独立した内容になっています。 組織を変えたい皆様ご一読をオススメします。 組織変革ファシリテーター―「ファシリテーション能力」実践講座 『組織改革ファシリテーター』 堀 公俊  著 東洋経済新報社 ¥ 2,310 (税込)